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(チャムセサン 韓国・民衆言論 8月10日付)

 


大統領選挙政局 強力な争点として席を掴むもの

 


{南北首脳会談 診断}(その1) 改革勢力集結 効果が大きいようだ

                          


ユ・ヨンジュ記者  

 


第2次南北首脳会談開催のたよりが知られながら、大統領選政局は、また違った局面を迎えた。ノ・ムヒョン大統領の訪北決定の知らせは、イーランド(訳注・民主労総のイニシャチブで、韓国全土の戦いに発展している、非正規職差別撤廃闘争とノ・ムヒョン政府の非正規労働法に対する労働運動を指している。イーランド、ニューコアなど全国展開の大規模店舗での戦いで警察の介入が問題となっている。)、アフガン事態(訳注・タリバンによる拉致問題)など重要な階級闘争の事案を、一挙に吸収する様相を帯びている。

 

南北首脳会談とりきめが突然の知らせでは、無論ない。参与政府(訳注・ノ・ムヒョン政権のこと)の任期内実現が既定事実のように受け入れられた事案だ。参与政府は、北核問題と韓半島平和体制構築など、懸案に対する画期的進展を図り、任期中 平和繁栄政策の成果を集約すると言う構想を持っていたし、同時に大統領選の局面で政局の主導権を握る政治カードに活用すると言う点も、予告されたことだ。

 

第2次南北首脳会談は、政府が言う通り“6・15共同宣言の合意精神を具現して、南北間の平和と繁栄の時代を実質的に拓いてゆくのに寄与することに成るもの”であり、“9・19声明、2・13初期措置の実践段階の移行時期に2次南北首脳会談を開催すること事でもって、北核問題と南北関係を同時に発展させることが出来る意味ある契機となるもの”に見える。

現在、政治地形で推し量ってみる時、南北首脳会談が成し遂げるものだけで、韓半島平和プロセスの重大な里程標として残る展望だ。 

 

のみならず、平和宣言の採択などと一緒に、韓半島非核化、韓半島の平和、軍事措置、南北経済協力など重要議題に対する所期の成果を生んだら、以後四者会談を通した終戦宣言、平和協定締結、北・米修好(訳注・国交回復)などと同じ、みな大きなシナリオが具体的な日程に上って来ることも出来ることになる。

従って、8月28日~30日開催される南北首脳会談は、大統領選レースが本段階に入る、9月以後の政局を意のままにする、メガトン級の争点として席を掴む見込みだ。

 

異なる変数が無ければ、第2次南北首脳会談の政治的成果は改革勢力が大部分を収斂するようにみえる。与党圏(訳注・ヨルリンウリ党や民主新党など)は、冷戦勢力と平和改革勢力の二分構造を通して、支持層を吸収するのに有利な位置を占める事が出来ると言う分析だ。

南北首脳会談というカードに内包される、政治的属性自体が、所謂“平和改革勢力”に有利に作用するものだからだ。北は年初、労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛、など、三紙の共同社説で“反保守大連合”を主張した事がある。太陽政策(ヘッピョ チョンチェク)と南北経済協力などに好意的立場を持ってきた北としては、南北首脳会談が反保守大連合に有利な環境を助成すると言う判断であり、その点で、参与政権と包括的な交感をしてきたと見ても、間違いではないと見える。

 

労働政策、自由貿易協定、派兵政策(イラク、アフガニスタン、レバノン等)、民主主義の後退など、さまざまな失政で支持勢力を無くしてしまったが

ハンナラ党の悪辣な手段に押されて守勢に置かれた参与政府と改革勢力にあって、次期政府で、第二次南北首脳会談の成果を、引き継いでいかなければならないと言う世論が形成されたなら、大統領選で与党圏の候補が有利な目標を占めることも出来ると言う判断だ。のみならず、8月のハンナラ党の競選(党内大統領候補選出)と、9月の与党圏および民主労働党の候補競選の過程で南北首脳会談問題が核心の争点として場所を掴むものと見て、大統領選レースが本格化する9月の雰囲気が与党圏の中心に流れると言うのに対して、誰も否定しない様子だ。

 

ハンナラ党は、韓半島平和ビジョンなど、親対北政策を取り出して政策的変身を企んでいるが、南北首脳会談の時期、場所、手順の問題を挙げて、反対すると言う立場をほのめかして、唯一の反対勢力として追い払われた。ハンナラ党が先月発表した“韓半島平和ビジョン”に“非核化、平和政策の為に必要な事、南北首脳会談開催”“南・北・米・中、四者間の終戦宣言の受け入れ検討”など画期的内容を盛っているにも拘わらず、第二次南北首脳会談にアンチ的(否定的)態度を選ぶしかない地形を作られたと見ることが出来る。

 

ハンナラ党の党論とイ・ミョンバク(李明白)、パク・クンヘ(朴槿恵)、二人の候補の立場に微妙な違いを見るのも、南北首脳会談カードが負担に作用している事を反証している。パク・クンヘ候補は、9日“大統領任期が6ヶ月残っても、必要であれば人気の終わりまで、すべきことはしなければならない。”と言って党内の反撥を顧みず、転向的支持の立場を披瀝した。差し迫る党内(大統領候補の)競選を前にして(訳注・8月20日、党内選挙で、イ・ミョンパク候補がパク・クンヘを破ってハンナラ党内候補となった。)中道層の吸収など、外から投げられた、南北首脳会談問題を有利に活用すると言う意図も見えるが、保守的支持層の反撥を、たやすくやり過ごすのに難しい有様だ。

反面、民主労働党は、南北首脳会談の決定の知らせに“熱烈に歓迎”すると言う声明を発表して、5つの、会談議題を提案するなど積極的な態度を見せた。キム・ソントン事務総長は、8日午前、国会で記者会見を持って“民主労働党は、今まで韓半島の平和と統一の為に南北首脳会談が速やかに開催されるべきことを主張して来たぐらい、今回の2次首脳会談開催合意を、全的に支持する。”と同時に“首脳会談を通して政府当局が韓半島問題の主題に、歴史的役目を尽くして行く事を心から願う”と、明らかにした。

 

南北首脳会談に対する民主労働党のこのような態度は、改革勢力と大きく異ならないが、議題などでも識別点が無く、一定するジレンマを抱いて行かねばならない立場だ。党内的には、自主派の集結効果があると言う診断があるが、9月以後、全体局面で見るとき、民主労働党に有利に作用するだけでは無いと言う分析だ。南北首脳会談のカードが、改革勢力の集結の流れに続く場合、この後、韓半島政策にあって、積極的で急進的な声を出すのかによって、進歩的支持層を確保できる様に見える

 

南北首脳会談で扱われる議題は、大きく四つに予測できる。韓半島非核化、韓半島平和体制、軍事措置、南北経済協力などだ。南北首脳会談を契機に、以後、米国が対北敵対政策を撤回したり緩和して、韓半島平和体制構築の論議が急流の勢いに乗る場合、南北首脳会談のカードに続いた韓半島平和問題は、9月以後、大統領選の局面全体を置いて、最大の威力を及ぼす事案として、席を占める見通しだ。

 

ここに、南北経済協力の活性化は、韓米自由貿易協定の延長で経済協力強化約定など、“南北FTA”を促進する契機となることも出来る。全国経済人連合会、大韓商工会議所、中小企業中央会などが、南北経済協力を活性化するだけでなく、韓国経済にも肯定的な影響を及ぼすものだと言う立場を表明したことから見るように、南北首脳会談カードの威力は、政治的イベント次元ではなく韓半島平和プロセスと南北経済全体に大きな変化を予告する。(続く)(訳 柴野貞夫)